【BLEACH】






青いなぁ。


空を見上げて、一言。


「…青いのはお前だ、馬鹿野郎」


降ってきたのは厳しい一言と、白銀の雲。
















聳え立つ空。


















「…日番谷隊長!?」
「よォ、いい身分じゃねぇか、


サボりか?そう言って日番谷隊長はわたしの隣に腰を降ろした。
ばっと起き上がって、正座する。
背筋が伸びる思いだ、そんな空気が彼にはあった。


「何でですか、昼休みですよー」
「そうだな、俺もだ」


そう言って彼はごろりと横になった。
わたしは正座した姿勢のまま、日番谷隊長を見下ろした。


「…なんだよ」
「…いえ、隊長でも寝転ぶことあるんだなと思いまして」
「そりゃあるだろ、お前俺を何だと思ってんだ」
「日番谷隊長というよりは、隊長さんたちの印象?朽木隊長とか、市丸隊長とか」
「あぁ、あの辺はしねーだろうな」


くっくっくと笑いを堪えるように言って、隊長は空を見扇いだ。
(この人は変わっている)
隊長のくせに、その風格が無い。
その身なりの所為だろうか?
背筋を伸ばさせる雰囲気はあるのに、何かが欠如している。


「…今日は天気がいいな」
「そうですね」


今度は穏やかに言う。
いつも寄っている眉は今も少しだけ、皺を作っていた。
隊長と呼ぶには頼りない大きさの背中。
あどけなく笑う顔。
常人離れした霊圧、戦い方。
自信に溢れた言動。
翻弄されて戸惑う視線。


だけどどれも、アンバランスで、孤立していて。


「隊長ってまるで空みたいですね」
「…は?」
「………空って、天気を湛えてるじゃありませんか?日に日に変わる、天気」


堂々としていて、大きくて、澄み渡っている。

色々な面を持っている、空。
優しげな日光を降り注ぐ、晴れ。
何もかもを洗い流す凛々しさ、雨。
時には厳しい一撃、雷鳴。
静かで存在感のある、雪。
どこかつかめない、霧。


「俺はそこまで気まぐれじゃねぇぞ?」


訳が分からないという表情でわたしを見上げる。


「…気まぐれじゃないんですか?例えば、貴重なお昼休みにこんなところに居ることとか」


くすくすと、わたしはからかうように返した。
当然隊長は、そこで「それもそうだな」って笑って返すはずで―…。


「気まぐれなんかじゃねぇよ、ちゃんと計画性を持ってここにきてる」


バカにすんなよ、と隊長は笑った。
さぁっと温かな風が吹き抜けた。
空まで舞い上がる、上昇気流。


「俺が何の目的も持たずに、その貴重な昼休みを割いて一隊士に会いにくるなんて思うなよ」


そう言って立ち上がる。
今度はわたしが見上げる番。
空に隊長の髪が重なって、まぶしい。
目を細めて、よく見ようとした。


「…もし、俺が空ならお前は太陽だな」


逆光が憎い、暗がりになって良く見えない。
(日番谷隊長?)






「…空を、茜色に染める」






そうぽそりと呟くと、隊長を背を向けて、歩き出す。



「…え、ちょ、それどういう意味ですか!?」


慌てて立ち上がり、わたしは手を伸ばした。


「…そろそろ昼休みも終わるぜ、ちゃんと仕事しろよ」







そう言った隊長は、耳まで茜色、真っ赤だった。











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あほ・・・!こいつあほだ・・・!(お前だ)
つまり日番谷隊長の頬を染めることができるのは君だってこと。
で、これも企画サイト「36℃」の2.聳え立つ空。より。
弱くてもいい、強くてもいい、とにかくわたしはだいすきだってこと。